〜八高音楽部・復活期〜

連載第2回・私たちとコンクール

   
  
こうして私たちの戦いの日々は始まった。

       
  〜当時の音楽部日誌より〜
                                                   
  4月20日(土)
    音楽部初練習。基礎練習のみ。
 
  
   4月30日(火)
    初めて部室に入る。写真・楽譜が山ほどあった。
    すごい曲ばっかりやっておられたんだなーと感心した。


 
顧問の先生から部室の鍵を頂き、長い間封印されていた部室に入る。

 
日誌には“感心した”と書かれているが、それ以前に部室の汚さに驚いた。

 
ほこりの舞う暗く暑い部屋、楽譜はそこらじゅうに散らばり、足の踏み場もなかったのは
 私の気のせいではないと思う。とりあえず部室の掃除から始めた。
 しかし・・・丸一日費やして掃除しきれなかった。恐るべし部室!


 一方、部室のものを一つ一つ手にして片付けていくなかで、かつての先輩方の青春時代の思い出に
 いくつも遭遇し、復活への決意が固まったのも事実である。



 何事も目標がないと前に進みにくいものです。私達は無謀にも、一年生10人で、Nコンに出ようと
 決めました。Nコンの存在はJrに聞きました。顧問の先生に相談に行ったら馬鹿にされました。


   
『えっ?自分らの実力わかっとる???指揮する僕が恥をかく。』


 
なんて内容の話をされましたが、私達が頑固なのは皆さんご存知の通り。


   
『それでも出たいんです。やってみないと分かりません。』

 
きっぱりと言い返しました。今思うと若かった・・・・・・・。青春ど真ん中!

 
 けど、けどね、やっぱり無理でした。
出場断念全員で話し合って決めました。恥をかいてもいいから
 出ようって決めた。しかし、音をとる時点で苦戦していた。ハーモニーには程遠い、歌うというよりがなる、
 そんな状態。どんなに頑張っても『合唱する』ということにたどり着けず、苛立ちだけがつのり、部員の心が
 バラバラになってしまったのです。コンクールどころではなく、部の存続に関わる状況に、私達は今は
 スタート地点、心を一つにとにかく基礎を築いていこうと決めました。


 たった10人でNコンの舞台に挑もうとしていた。本気だった。


 
私達の年代は、今でもにこだわる。コンクールにこだわる。周りの方々の支えに対する恩返し
 という気持ちもあったかもしれない。でも、それ以上に八鹿高校音楽部の復活を、合唱界にも認めて
 欲しかった。自分達が頑張った証が欲しかった。私達にとってNコンは夢の舞台。出たくても出れなかった。
 この時の悔しさこそ、今でも私達が賞に、コンクールにこだわる理由なのです。


   6月4日(火)
 
部会を開きました。「私達よりまわりの人のほうが真剣になってくれとるから、
 私達がもっと真剣にならなあかん」

 “真剣さ”さえあれば、少しぐらい下手でも頑張っとる姿はきっと誰かに認めて
 もらえるはず。“上手さ”を認めてもらえるようになりたいけど、
 でも“上手さ”は認めてもらえなくても“一生懸命さ”は認めてもらえるように
 頑張りたい。支えてくれとる人の期待にこたえたい。




  
けれど辛い事の方が多かった。

連載第3回に続く。

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